魔法螺の乱毒ファンタジー

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help リーダーに追加 RSS パイレーティカ――女海賊の後継者

<<   作成日時 : 2007/05/21 02:30   >>

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Piratica  by Lee, Tanith ©2004 Hodder 370p
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 私の蔵書P・Bの中で最大のボリュームを誇っているのはエイキンだと思っていたのですが、リストを確認したところ、タニス・リーの本がエイキンを2冊上回っていたとわかってびっくり。読んだ本はこども向きばかりのエイキンの方が断然多いのですが。タニス・リーは私のP・B歴の初期に出会い、読み終わったばかりだったか読んでいる最中だったかに、その訳本が出たという因縁のある作家。その作品がタニス・リーの日本デビューでした。たまたま私にとってのタニス・リー初体験が日本の出版界にとっても初体験だったというわけ。それから立て続けに彼女の訳本がハヤカワFTから出版され、しばらくなりを潜めていましたが、最近になって産業編集センターという出版社から数点が出版され、またブーム再燃かというところです。
 タニス・リーの本は児童書と大人向けにはっきり分かれますが、今回紹介する〈Piratica〉は児童書に分類されます。

 お嬢様学校の「お行儀」の授業で頭に本を乗せて歩く練習をしていた16歳のアート(本名アルテミシア)は階段で転んで頭を打った拍子に幼い頃の記憶が戻ってきた。すらりとしていても力は強く、赤みが勝った金髪と緑の目をもつモリー・フェイス。荒くれ男どもを従えて七つの海を航海する海賊船「招かれざる客」号の船長。それがアートの母だった。海賊とはいえ、襲った船の乗組員を殺すことは決してせず、金持ちや敵の海賊からは奪えるだけの金銀や財宝を奪い取っては、国に戻って貧しい庶民に分け与える正義の女海賊。国民の人気者でパーティでも花形の「パイレーティカ」。6年前に最大の敵ゴールデン・ゴリアテの襲撃により「招かれざる客」号は沈没、母は命を落とし、アートは小船に乗せられてなんとかロンドンならぬランドンにたどり着き、父のウォーターハウス氏に引き取られたのだった。
 その後、なぜかそれまでの記憶がすっかり拭い落とされ、母は性悪女だったと教えこまれ、お嬢様学校で淑女のたしなみを学びながら6年間を無駄に過ごしてきたことに気づいたアートは愕然とし、昔の生活に戻ることを決意する。急に態度が変わった生徒に驚いた教師は父親を呼び出したが、その面会も決裂に終わり、アートは学校の一室に閉じ込められた。寒いクリスマスイヴの夜、食事も暖炉の薪も与えられなかったが、アートはその暖炉の煙突の中をよじ登って逃亡に成功した。
 お嬢様学校での6年というブランクはあったが、もともと船で暮らしていた身、マストやロープを登るのはお手のもの。ただ困ったことに、顔も手足も、厩番の少年から買い取った服も真っ黒になってしまった。アートの目的はランドンにあるコーヒー・タヴァーンという店。どんな店だったかまったく記憶がないのだが、そこに行けば昔の海賊仲間に会えるという確信があった。
 ランドンへの街道へと急ぐアートの耳にひづめの音が聞こえ、止まった。物陰から覗くと、ランドン行きの乗合馬車にひとりの黒ずくめの男がピストルを向けていた。男はカッコー・ジャックと名乗り、御者や乗客を馬車から降ろし脅している。ピストルを空に向けて発射すると、その音に驚いた馬が走り出し、その馬車を追って御者や乗客たちが走り去った。後に残ったのは追いはぎカッコー・ジャックと乗客のひとりの青年フェリックス・フェニックスだけ。結局追いはぎは貧しいフェリックスからは何もとらずに立ち去ったが、入れ替わりにアートが街道に飛び出した。馬車馬が急に走り出した拍子に取り落としてしまっていたカッコー・ジャックのピストルを手に、アートはフェリックスを脅して上着とコートを脱がせ、自分の服と交換した。そして逃げるための時間稼ぎに街道沿いの小屋に閉じ込めた。
 このあと、黒ずくめとなったフェリックスはカッコー・ジャックと間違われ、警察に追われる身となる。一方アートは目的のコーヒー・タヴァーンにたどり着いた。そこには懐かしい仲間たちがいた。しかし、よく考えてみると変だ。なぜみんなここに? モリーの艦隊のどれかに移って海賊家業を続けているはずの彼らがこの場にそろっているのも、不思議といえば不思議だ。だいたい海賊という違法な稼業から足を洗ったとて、犯罪者ではないのか? それが捕えられもせず、呑気に商売に精を出しているのもおかしな話だ。海賊たちの話によれば、アートもモリーも海賊たちも本物の船に乗って航海していたわけではないらしい。アートにはまったく信じられない話だ。いくら幼かったとはいえ、記憶には潮の香りも嵐にあって激しく揺さぶられる感触も鮮明に残っているのに、それが空想の産物だとは思えない。海賊たちとは話がかみ合わないままだったが、わかったことは、6年前の事故で艦隊は解散したらしく、それ以来「招かれざる客」号のクルーは海賊の衣装のままコーヒー・タヴァーンで働いているということだ。すぐには海に戻れないことがわかってがっかりしたアートだったが、今度は自分がみんなの面倒を見る番とばかり、クルーを海へと誘う。なぜか気乗りしない様子のメンバーにアートは不審がるばかりだった。
 しかし運がめぐってきた。テミズ川を上り下りしてコーヒー豆を運ぶための船「海賊のコーヒー」号に乗り組むことになったのだ。テミズ川を下った後、ポーツマウスをさして海岸沿いを航海していくとはいえ、この船は海賊船には不向き、でもはじめの一歩だと考えることにして、アートはクルーと一緒に船に乗りこんだ。途中で警察に追われているフェリックス・フェニックスを乗船させ、海賊稼業を始める前から「海賊のコーヒー」号はお尋ね者になってしまう。
 ポーツマウスの港でアートたちの船のそばに停泊していたエレファント号は魅力的な帆船だった。アートはここで初めての乗っ取りを計画する。思った以上に簡単に事が運び、アートは晴れて新しい「招かれざる客」号船長、二代目パイレーティカとなったのだった。それと同時にお尋ね者にも。
 立ち寄ったある港の居酒屋でアートはひとりの少女に出会った。その少女こそあの宿敵ゴールデン・ゴリアテのひとり娘リトル・ゴールディだった。ゴールディはアートの持っている宝の島の地図を手に入れるつもりだという。心当たりのなかったアートだが、地図を売ることにし、それらしく加工した別物を渡す。こうして自分たちは本物の宝の地図をもとに宝探しの船旅へ……
 もちろんその航海が順調にいくはずがなく、引退した母の腹心に裏切られたり、目指す宝島があるはずの場所になかったり、ようやく目的地に着いても宝物がちっとも見つからなかったり、いよいよというときになってあとをつけてきたらしいゴールディが宝島に上陸し……
 そして最後にはアートは海軍に捕らえられ、絞首台へと向かう運命に……


 思い込みの激しすぎる主人公の性格、ちょっとばかり強引なストーリー展開、これまで私が読んできたタニス・リーの作品に比べ、ユニークさが薄れ、わかりやすくなっていて、なんだか平凡な作家になってしまったような印象。おもしろいと感じたけれども、ちょっと物足りない気がするのは、私のつたない英語力では十分に読み切れていないせいでしょうか?

 この記事を書き始めたのは半年ほど前。その後タニス・リーの出版環境はさらに拡大し、4月からは「ヴェヌスの秘録」シリーズ(柿沼映子訳、産業出版社)、「銀色の恋人」(井辻朱美訳、ハヤカワ文庫)の再刊とその続編の出版、そしてなんとここで紹介した「パイレーティカ」も5月中に出版予定とか。この勢いで初期の傑作「白い魔女」シリーズが出てくれればうれしいのですが。


〈Piratica Series〉 作品リスト
  1. Piratica 2004 ☆
  2. Piratica II 2005 ★

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