Fanuilh by Hood, Daniel ©1994 Ace 259p![]() 今年初めに投票していただいた”Fanuilh”を読みました。投票のお願いの際、他の本も含めて簡単な解説をしたのですが、そこにかなりの勘違いがあったのでした。なので、せっかく投票をしていただいた方のご期待にそえたかどうか・・・解説しなかった部分でも、相当思いこみがあったようで、とにかく主人公についての勘違いは相当なものでした。 裏表紙の解説にはリアムについて「魔法使いタークウィンの友人」としかなかったのですが、使い魔Fanuilhが魔法使いの跡継ぎ候補と考えていたところから、勝手に「魔法使いの弟子の少年」と思い込んでいました。まだ自信もなく、(多分)身寄りがないか、あったとしても貧しく、犯人がみつからないと路頭に迷うばかりか、命までも危険にさらされてしまう弱い存在なのだろうとも(裏表紙にも失敗すれば助かるすべがないようなことが書かれていたし)。 実は・・・ 「魔法使いの友人」を字義通り取るべきでした。非常に親しいとまではいかないが、魔法使いと利害の絡まない付き合いをしていた数少ない人間として、自分の遺産を託す相手として指定したのでした。 魔法使いは町から離れた海辺の家に住んでいました。リアムは少年どころではなく、30をちょっと過ぎた外国出身者。船で諸国を巡り、数々の不思議を体験してきました。その体験談を記録しておこうと腰を落ち着けたのがサウスワークの町(同じ綴りでロンドンに「サザーク」という地区がありますが、ここは空想の町なので、異なる読み方を採用してみました)。サウスワークは港町ですが、海岸はがけになっており、泳ぎたくなったリアムが砂浜を探して海岸沿いを歩くうちに見つけたのが魔法使いの家でした。たびたびそのあたりで泳ぐうち、魔法使いとも話をするようになったのです。そしてどうやら友情が築かれていったようです。 最初に魔法使いが登場したのが死体発見のシーンだったため、どのような交友関係だったのか、あまりよくわからないのですが、お互いかけがいのない存在と思っていた様子は特にありません。 リアムは頼りないどころか、サウスワークではあまり知られていない地域の地図を商人に売ったりしてしこたまもうけていたようで、立派ないでたちに貴族か聖職者かと勘違いされるひとこまも。残忍そうな笑顔もお気に入りで、下宿の下働きの少女を怖がらせたりもします。あちこち旅するうちには暗い過去もあったようで、どうやら殺人も犯していたよう。ただし、戦争にも従軍したようなので、そこでのことかもしれません。一応職業は「学者」ということになっており、狭い範囲しか知らない町の人々にとって、その知識は脅威と映るようです。また、以前にも殺人事件を解決したことがあるようでした(運が良かったからだとか)。 話が始まるのは町の裕福な商人ネッカーのパーティ。リアムの地図をもとに未知の国へ出かけ、大きな取引を成功させ、危険な嵐をくぐり抜けて戻ったところでした。ご機嫌になって下宿に戻ったリアムですが、なんとなく寝つかれず、深夜に下宿を抜け出して魔法使いに会いに出かけます。魔法使いの家にはこうこうと明かりがついていましたが、ノックには誰も答えず、入ってみると魔法使いはベッドに横たわっていました。寝ているのかと思ったのですが、様子がおかしいので近づいてみると、胸には短剣が突き刺さっていました。驚くリアムの意識をかすめるものがあるので、別の部屋を覗いてみたところ、いきなり足に鋭い痛みをおぼえ、気を失ってしまいます。 翌朝目覚めたリアムの頭の中に使い魔Fanuilhの思考が入り込んできます。Fanuilhはすっかり身体が弱ってあまり動けず、世話をしてほしいだの、食べ物を持って来いだのと指示し、自分がリアムの魂の一部分を共有していることを明かすのでした。そして、取引を持ちかけます。竜が元気になるまで世話をし、魔法使いを殺した犯人を見つけてくれれば、魔法使いの簡単な技を教えると。竜の思考を排除する方法もその中に含まれているとのことで、竜のつけた条件もさほど難しくないと考えたリアムは取引に応じることにするのでした。 しかし、期待に反して竜は魔法使いが殺される直前、誰が来たのか知りませんでした。魔法使いが竜の思考を排除していたためです。そこで、最近1週間に魔法使いの元を訪れた4人の人物から調査を開始することにしました。以前からよく来ていた薬屋、吟遊詩人と思われるハンサムな若者、ボディガードを従えた金持ちの商人、フードを目深にかぶった女性。しかし、実際に特定できるのは薬屋だけで、あとふたりは竜が顔を覚えているものの、名前まではわからないし、女性にいたっては、顔もわからず、竜が区別できるのは魅惑的な話し方だけという有様。 まず、竜の指示に従って町の警官役の役人を呼びにいきます。この役人とリアムは、一緒に捜査をすすめるうちに、意気投合するようになり、最終的には親友のような関係を築きます。しかし、彼には血を見ると気絶する学者と思われてしまいます。それが役に立ったこともあるのですが。 ひとり目の薬屋は信心深い男でしたが、何かを隠している様子。ただ、堕胎の薬を求めに来た女がいたことがわかります(もちろん売らなかった、と薬屋)。金持ち商人についてもすぐに特定することができ、リアムはおびえた学者のふりをして、商人に地図を売り込みに出かけます。その場で、商人から商売敵のネッカーに地図を売らないこと、翌日には町から立ち去ることを約束させられてしまいます。不思議だったのは、強面のボディガードを引き連れたこの商人との約束を守る気がないのに、簡単に約束してしまい、そのあと立ち去ったふりさえせず、ネッカーの屋敷を訪ねまでしたことです。 3人目もわかりました。ネッカーの屋敷を訪ねたときに、強引に押しかけた吟遊詩人の若者です。若者ロンの属する劇団の公演を見に行き、翌日楽屋の練習中に聞き込みをすると、魔法使いとかかわりがあり、殺人の動機としても通りそうな事実が判明しました。その結果、役人はロンを逮捕するのですが、ロンの姉ローラが、こっそりリアムを訪ね、弟の無実を主張し、助けてくれと懇願します(求めもしないのに、自ら見返りも提供します)。実は劇団の公演を見て、リアムはすっかりローラに心を奪われてしまったのでした。聞き込みなどを通してローラの性格の悪さを知っても、魅かれる気持ちは消すことができません。 4人目の見当がつけられず、ロン犯人説にも納得がいかないリアムでしたが、薬屋のもとを訪れた女が鍵を握っていると見当をつけます。妊娠しているその女とその相手がわかれば、犯人のヒントも得られるのではないかと。ある日ネッカーが、なにやら夜に用事があるとそわそわしているのにピンときたリアムは、役人が突き止めた女の密会場所へと出向きます。その夜は嵐になりました。その嵐をついてリアムは役人の部下とともに、密会場所を見張るのですが、期待通り女と男が前後してやってきました。女の正体はわかりませんでしたが、男は予想したとおりネッカーでした。こっそりあとをつけ、ネッカーと女の会話を盗み聴いたリアムの頭にひらめいたものが・・・ こうして事件はめでたく解決したのでした。とはいっても、私にはリアムの思考回路がよくわかりませんでした。英語だからわからないのか、もともと私の思考回路と波長がまったく異なっているのかは不明ですが、もしかしたら両方かも。 さて、読み終わってFanuilhに対する私の評価は、というと・・・ 正直、まだ定まりません。いまいち登場の機会が少なく、よくわからないのです。最初は弱っていて世話をしてもらわないと死んでしまいそうな存在。でもずうずうしく主人公の頭に思考を送り込み、考えていることもすべて筒抜け。元の主人を殺した犯人を捕まえてもらいたがっているくせに、主人が死んだことに対する感情はリアムには伝わってきません。実際には感情のない生き物のようです。しかし、事件解決のあと、リアムのもとに犬のように忠実な態度でやってきたりするところは、かわいい気もしました。 そのうち続編を読んで、もうちょっとFanuilhをよく知りたいと思います。 ところで、Fanuilhはなんと呼びましょう? 〈Fanuilh〉シリーズ 作品リスト 1. Fanuilh 1994 ☆ 2. Wizard's Heir 1995 ★ 3. Beggar's Banquet 1997 4. Scales of Justice 1998 ★ 5. King's Cure 2000 ★ Fanuilh
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