![]() The Marvelous Misadventures of Sebastian by Alexander, Lloyd ©1970 Puffin 204p 偶然、少年が主人公となっている冒険物語が続きました。両方とも質の高い作品を次々に出している児童文学の優れた書き手によるもので、その中でも優れた作品です。ここで紹介する”Sebastian”は全米図書賞(児童部門)、もう一冊のAviによる”Crispin”はニューベリー賞を受賞しています。どちらも主人公の少年がもといた場所から追われ、命を狙われる身となり、逃げるうちに次々災難が襲ってきて、読者は目(?)が離せません。最後にはお約束の「めでたし、めでたし」となるわけですが、そこまで共通しているものの雰囲気はまったく異なっています。 ”Sebastian”はどちらかというと「ほら話」、最初から最後まで、どんな危機にあっても明るい雰囲気は変わりません。それに引き換え”Crispin”のほうは主人公が虐げられた最下層の出ということもあり、描き方はシリアスで、終始暗い雰囲気の中で話が展開します。 ”The Marvelous Misadventures of Sebastian”の主人公セバスチャンはとある小さな町の領主の楽団でバイオリンを弾いています。舞台は18から19世紀あたりのヨーロッパ風架空の王国。そのお屋敷にたまたまお客としてやってきた大蔵大臣の前で楽団が演奏を始めるや、セバスチャンは失敗して変な音をたててしまい、しかも大臣がその音を自分のズボンが破れた音と勘違いしたため「恥をかかせたやつ」としてお屋敷から追放されてしまいました。仕方なく次の仕事を求めて旅に出て、いじめられていた猫を助けたり、ニコラスという親切で万能の男と道連れになったり、やたらにおべっかを使う床屋に出会ったり、宿でさて寝ようとしたら同室の小柄な少年にバケツの水を浴びせられたり……ところが、そのいじわるな少年と思っていたのが、実は国の第一の実力者の摂政と婚約したばかり(実はさせられたばかり)の王女様だったのです。 王女は最近両親を事故で亡くしたのですが、それを摂政の陰謀ではないかと疑っており、いったん叔父のもとへ逃げて摂政を倒す戦力を集めたいと考えていたのでした。セバスチャンはニコラスといっしょに王女を助けることにしたのですが、例の床屋が実は摂政側のスパイで、その床屋に姿を見られた3人は追われる身となってしまいました。 逃げる途中で旅芸人の一座と出会い、そこで魔力を持つバイオリンを発見(これがまた災いの元)、さらにその一座の持っていた気球に乗って逃げたのに、あとひと息というところで、風向きが変わって敵陣の真っ只中に着地してしまったりと、何をやっても裏目に出てしまうセバスチャン。最後には捕らえられてしまうのですが、当の大臣はセバスチャンを、王女様をさらった極悪人とは見ているものの、自分に恥をかかせた張本人だとはちっとも見抜けず、連れてこられた元主人の領主からも、逆らってばかりのおまえが、そもそもなぜ、そのときだけは「出て行け」との命令に従ったのかとあきれられてしまう始末。 さて、極悪人の烙印をおされたセバスチャンの運命やいかに…… とにかくセバスチャンは思ったことをすぐ行動に移す性格。正義感も強いので、野良猫がいじめられていれば助けずにはいられないし、余計なこともすぐ口に出してしまうし、トラブルを呼んでいるとしか思えない行動に読者は、はらはらどきどき。あちこちに敵も友人も作っていく過程で、最初は「バカなやつ」とか思っている読者も次第にセバスチャンの人柄に引き込まれ、友人のひとりとしての視線で見守っていくようになります。捕らえられたあと、牢から逃れるのはいささかご都合主義的ですが、そのあとの展開には、助けた猫に救われる、ちょっとほろりとさせられる部分もありました。 ロイド・アリグザンダーには「プリデイン物語」(神宮輝夫訳、評論社)で出会いました。私はこの本で初めてウェールズの伝説の存在を知ったのですが、「プリデイン物語」はウェールズの伝説そのものではないにしても、児童書でウェールズの伝説に親しみをもつのも素敵な体験だと思います。「プリデイン物語」以外にも翻訳が数冊ありますが、訳されていないものも数多く、ファンタジーの中身も歴史物、冒険物、ユーモア物などいろいろと楽しめます。 〔訳書〕 「セバスチャンの大失敗」神宮輝夫訳,評論社 The Marvelous Misadventures of Sebastian: A Grand Extravaganza, Including a Performance by the Entire Cast of the Gallimaufry-Theatricus
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迫害された超能力者たち
Obernewtyn by Carmody, Isobelle ©1987 Tor 246p ...続きを見る |
魔法螺の乱毒ファンタジー 2006/08/20 04:41 |
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